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どうも話が長くなりそうなので、私はそっと真治に向き直って訊いてみた。
「ところで、私はどうしたらいい?」
「え」
真治は我に返ったように息をついて、慌てて私に向き直った。そして、穏やかに微笑んで見せたが困惑しているようでもあった。
「蓮川さんには本当に申し訳ないんですが……」
と、言いかけて少し沈黙し、やがて思い切ったようにまた口を開く。「あのアパートは修繕中です。しばらく時間がかかるようですし、また当分の間は秋葉家に」
「っていうかね、蓮川さん」
すぐに七瀬さんが会話に加わる。「あなたを秋葉家から出すわけにはいかなくなったの。もう、なりふりなんてかまってられない。申し訳ないけど、無理にでもとどまってもらうわ」
「一体どういう」
「簡単に言うわね。蓮川さんはまだ人間。でも、潤とおじい様の血が混ざってる。ただの人間とはもう言えないの」
「何……?」
意味が解らず、しかし急に心の中に芽生えた不安に駆られて問いかける言葉を探す。しかし、見つからない。
「吸血鬼になる方法は吸血鬼の血を飲んでもらうこと。それも、大量にね。その結果、人間は吸血鬼へと遺伝子から変化する。でも、今の蓮川さんの現状は違うわ。少し吸血鬼の血が混ざっただけ。それも傷口から、その傷の修繕のために使われただけの量。でも、混ざった吸血鬼の血が問題。潤だけだったら問題なかったわ。おじい様の血というのが厄介なのよ」
「だからそれは」
「血が強すぎるの」
七瀬さんの表情は真剣だった。こちらが不安を覚えるほどに。
「人間だけど、吸血鬼の血の影響を受けると思う。そして、多分、黒崎のようなおじい様の血を狙うヤツに目をつけられる。あなたの血を吸えば、他の吸血鬼たちも秋葉の血の強さに影響を受けるってこと」
つまり、それは。
「我々が守ります」
真治が言う。「そのためにも、秋葉の家に戻ってきて下さい。我々の目の届く場所に」
少しの間、私は何も言えなかった。
今までよりも自分が厄介なところに立っている、という状況は理解できた。
逃げ場がない、というのは正にこういう状況なのだろう。
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