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「海賊王に俺はなる!」
そんなことを言ったのは誰だったか。
目の前に広がる大海原を見つめながら紳助は考えた。
彼はついさっきまで、社会の授業で惰眠を貪っていたはずだった。
揺れる足元に視線を落とせば、すぐさま吐きそうになる。
そう。ここは船の上。
パニックになる紳助の目に次に飛び込んできたのは、2人の横たわる体だった。
一瞬嫌な想像が脳裏によぎったが違うらしい。すうすうと寝息を立てる二つの体に紳助は近づいた。
「あのー」
1人が目を覚ました。
「んー。ここは。」
2人目が起き上がるまで二人が格闘すること約10分。見ず知らずの男を起こすのは骨が折れる。
しびれを切らした紳助が、むりやり瞼をこじ開けることによって、起床した三人目の男であった。
三人は一度船の中に入ることにした。
紳助たちが目覚めたところは船の甲板だったようで、中の広さからしても大きい船だということがわかる。
中の共有スペースのようなところに三人は腰を下ろした。
口火を切ったのは紳助だった。
「ここどこですかね。」
尋ねられた二人は首を捻る。
「いや、俺、ついさっきまで、大学で講義受けてて。うとうとからの気づいたらあそこに寝てたからわかんないです。」
驚くほど寝起きの悪かった男は、驚くほど覚醒は早かったようだ。
「僕も。仕事がひと段落して仮眠取ろうとしてここだったんだ。」
「俺も授業受けてて。眠って…。んー。じゃ、全員同じ状況かあ。」
紳助は内心みんな年上か?やりづらいと思いながら言う。
「あ、まだ名前言ってなかったですね。俺、浪川紳助(なみかわしんすけ)。高校三年生です。」
「俺は、上田真斗(うえだまさと)。大学二年生!」
この状況で辛そうな奴である。「
「僕は、坂上智樹(さかがみともき)。ゲーム会社で働いてる」
いかにもできそうな男である。
「あれ?この船、なんで動いてるんだろ?」
「この船、俺たち以外に誰もいないのに、船は動いてる。やばいんじゃねえか?俺たち、どこに向かってんだ!どこに連れてかれるんだよ!」
「真斗、あわてるな。ここで慌ててもどうしようもない。まずはこの船の中身を見て回って、動いてる仕組みを探ろう。もし僕らで動かせるようなら、島を見つけるまで動かして、一度船を降りよう。」
さすが社会人といったところか。智樹はテキパキと二人に指示を出し、三人は船の中を歩き回ることになった。
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