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「まさ。もう…どこにもいかない?」
「ああ。約束するよ。」
真斗は、ただ一人の家族、妹のみゆきとの会話を思い出し、ため息をつく。
両親を早くに亡くした真斗たち兄弟は、それでも仲睦まじく生活していた。
真斗たちの住む町は田舎であり、真斗は高校の時から電車通学、年の離れたみゆきは、町の小学校に通っている。
そんなある時、みゆきが高熱を出した。病院に連れていけないほど弱り切っていたみゆきを残し、バスで二駅先の薬局まで薬を買いに行った真斗だったが、バスは時間通りには来ない。
その日は運悪く、真斗の汁バス市場もっとも最悪な遅延だった。
結局、真斗が家に戻ったのは、出発してから4時間後のことだ。当時8歳のみゆきには、どれだけ長い時間待ったかわからないほどであった。
泣きはらした目にもう一度涙を浮かべ、冒頭の言葉を放ったみゆきに、罪悪感の塊に押しつぶされた真斗は、それしか言えなかった。
しかし、今の状況はなんだ。
真斗は、智樹から指示を受け、船の一階部分を探索している。船は二階建てで、二階に上がるはしごの奥に、紳助が任された奥の空間があるという構造だ。
一階には、キッチンとダイニング、さきほど三人が話をしていた共有スペースに、風呂、そして、鍵のかかった部屋が一つあった。一通り見て回った真斗は、もう一度ため息をつく。
「みゆき…」
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