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彼女は「あぁ」と笑いながら答えた。
「前に健吾くんが雑誌読んでて「いいな」って言ってたお店が新宿にあるの。
だから日本に戻ってきた日にひとりでリサーチしようと思ったら、たまたま事故にあっちゃったんだけどね」
「……そっか」
その話に納得しつつ、浩二はまた複雑な気持ちになった。
事故を思い出せば、自然と瑞希が頭に浮かぶ。
土曜日に予定が入ったと連絡した時、彼女の返事はあっさりしていた。
「わかりました」という以外になにも言われなくて、身構えていた浩二は拍子抜けした。
少しして「体が大丈夫なら日曜に会えない?」と尋ねれば、彼女はひとつ前と同じ温度で「わかりました」と答えた。
感情の読み取れない声に、不安と同時にうら寂しい気持ちが胸をもたげる。
黙り込んでいると、美月がふいに浩二を下から覗き込んだ。
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