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そう思ったのは、打算でも計算でもない。
彼のことが好きだと気付いてしまったから。
瑞希は手を握り返した。
彼は少し驚いたような顔をした後、すぐに柔らかく微笑んだ。
その笑顔は、瑞希の胸をいっぱいにさせる。
それは嬉しさなのか、今まで見えなかった彼の心に気付いてしまいそうだからか、判別がつかなかった。
瑞希が考えるのを放棄したのは、目の前にタクシーが止まった時だった。
彼の手が一旦離れ、瑞希を中へと促す。
座席に座ると、すぐにミヤサカも瑞希の隣に座った。
行き先を告げ、タクシーが走り出すと、瑞希は彼を見上げた。
ミヤサカはしばらくきょとんとしていたけれど、なにかに気付いたような顔で瑞希の手を取った。
瑞希はほっとした。
普段は恋人と手を繋ぎたがるほうじゃない。
だけど今は気休めだとわかっていても、彼の温もりを感じて、心が傍にあると信じたかった。
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