1763人が本棚に入れています
本棚に追加
喉まで出かけた言葉を飲み込んだのは、瑞希は夜のことに過敏だったと思い出したからだ。
自分はそんなつもりはないけれど、彼女が少しでも身構えたなら、せっかく縮まった距離がまた開いてしまう。
それはどうしても避けたい。
プロポーズを了承してもらった時は、思い出すと無意識に笑ってしまうくらい嬉しかった。
だから彼女に嫌われないように、ずっと傍にいてもらえるように、細心の注意を払わなければ。
その日、夜遅くに健吾からメールがきた。
近いうちに実家に顔を出せとの文章に、浩二はスマホから視線を外して天井を仰ぐ。
さっきは同じことを言われた時は、あの場を逃れるために頷いた。
けれど、正直会いたくない。
健吾は瑞希を見て、なにか気付いたかもしれなかった。
時間がほしい。
なにを言われても揺るがない心でなければ、健吾に秘めていたすべてを見透かされてしまう気がした。
最初のコメントを投稿しよう!