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締め切った病室はしんと静まり返っていた。
瞳を捉えられた瑞希は、ミヤサカと向き合ったまま身じろぎもできない。
自分の鼓動と、彼の息遣いだけを感じる中、耳の奥でさっきの言葉が響いた。
(……本当、なんで今なの……)
結婚してくれないか、なんて、こっちはほとんど頭がまわっていないいうのに、反応なんてできるわけがない。
安いドラマじゃあるまいしと思うのに、彼がとても真剣なのが伝わるから、瑞希は自然と目頭が熱くなった。
今返事をする必要なんてない。
だけど、家に持ち帰って考えたとしても、きっと出す答えは同じだ。
瑞希はかすかに笑って頷いた。
後でこんな場所でプロポーズしたことを責めれば、ミヤサカは平謝りするに違いない。
その時にわざとむくれて、わがままをひとつ聞いてもらおう。
プロポーズが嬉しかったことは、照れくさくてきっと言えないのだから。
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