1763人が本棚に入れています
本棚に追加
迎えた土曜日は、朝から雲一つない晴天だった。
夏の東京は亜熱帯のように暑い。
浩二は待ち合わせ場所に向かいながら、重い気持ちと共に汗を拭った。
西口の改札を抜けると、すぐに声がした。
「浩二くん!」
美月は嬉しそうに手をあげて、自分の居場所を示す。
屈託のないこの笑顔を見ると、どれだけ気分が落ち込んでいても、つられて微笑んでしまうから不思議だ。
「おはよ、美月」
「おはよって、もうお昼だよー。
さっきまで寝てたの?」
呆れたような美月に、浩二は「しかたねーだろ」と肩をすくめる。
「昨日も遅かったんだよ。
それで、健吾は昨日中国帰ったの?」
「うん、週明けからまたいろいろと忙しくなるから、準備しときたいんだって。
私は今日どうしても友達と会いたいって言って残ったんだけど、夜のフライトで中国に帰るね」
最初のコメントを投稿しよう!