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「ちょっと浩二くん、そんな暗い顔をしてどうしたの。
イケメンが台無しだよ」
「イケメンって……。思ってもないこと言うなよ」
美月の顔が間近に迫ったことで、浩二は一気に意識を引き戻された。
呆れたふりをすれば、美月はほんの少し頬を膨らませる。
「思ってるよ、昔から何度か言ってるじゃん」
「あっそ。それはどーも」
「もう、その態度はなによー。ちょっと心配して損したじゃない」
むくれた美月に、浩二は「はいはい」と適当に言って歩き出した。
たしかに昔、何度かそんなふうに言われた記憶がある。
でも、それならどうして欠片も気持ちをくれないのかと、その思考に陥ることの繰り返しだ。
現に、今も鼻歌まじりに後ろをついてくる美月は、浩二の背を見つめていても、健吾のことしか考えていない。
初めからわかっているのに、考えると苦しくなる。
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