第1章

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『行ってきます…』 誰も居ない家に向かってそう呟いて登校するために俺は家を出た。 返事が反ってこないのは分かっていても習慣にしてしまったのは自分だ… 10年近く続けてきたものを今更簡単に改めることもできない… 『また今日も何も変わらない1日の始まりか…』 そんなことを呟きながら自分の通う学校へ向かい歩く。 ただ何もなく登校し、誰と喋ることもなく自分の教室に向かう。 そして自分の机に到着して1つため息をつく。 『はぁ、またか…』 俺の机の上は暴言や落書きで埋め尽くされ、彼岸花が一輪挿しされた花瓶が置かれていた。 その花瓶を教室の後ろにある棚の上に置き自分の椅子に座った。 「おぉ、これは嘆かわしい。天下の獅王(しおう)グループの嫡男で在らせられる獅王光軌(こうき)様の机が大変な事になっているではないか。」 恭しく俺の前に現れた男にまたため息を付きそうになりグッと堪える。 「いつものことですから、お気になさらずに、私はなんとも思っておりません。」 「これはこれは、光軌様は本当に大きな器をお持ちですなぁ。他の者と多少髪や瞳の色が違うだけだと言うのに、本当に嘆かわしい。」 その言葉に俺は頭を抱えそうになるが髪に触れるだけに留めて相手に答えを返す。
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