第1章

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「お気遣い感謝します。ですが、私の髪色や瞳の色が特殊なのは確かです。自分たちと違うものを持っている者を区別するのは人として抗えぬ事です。どうしようもない。」 「ほぉ、これはこれは…さすがは光軌様。思考が達観していらっしゃる。しかし、私はあなた様の髪色が蒼銀、瞳の色が赤だからといってこの態度を変えるつもりはありませんよ。なにかあればご相談ください、光軌様。では私はこれで。」 (白々しいな、主犯の人間が…) この言葉に舌打ちをしそうになるのを我慢して言葉を返す。 「お気遣い痛み入ります。」 それだけを返して俺は授業の準備を始めた。 そこからは何もなくただただ授業を聞き流す。 教師は俺の机を見ても何の反応もしない。 俺が元から居ないかのように授業を進めていく。 この学校がおかしいのではなく、おかしいのは恐らく俺という存在だ。 最近そんなことを考えるように俺はなっていた。 俺がこの世に生を受けたのは獅王家だった。 大財閥と言っても良い会社を経営する父親のもとに生まれた俺は父親とも母親とも違う髪と瞳を持って生まれてしまった。 そのことで父親は母親を疑い、俺と母親を山奥に遠ざけた。 俺は外に出ればその人と違う見た目から化け物などと呼ばれ蔑まれ、虐げられた。 そんな中で母親だけは俺を愛し、育ててくれた。 しかし、それも長くは続かず、俺が9才の時に事故で死んでしまった。 身寄りのない俺は父親に引き取られたが父親は俺にほとんど近づかず、仕事に明け暮れているようだった。 俺は父親に従い、ただ与えられることを何も言わずに無気力にこなしながら今まで生きてきた。 自殺を考えなかった訳じゃない、しようとしても何故か毎回何かに阻まれるように死ぬことが出来なかったのだ。 時には首をつろうとして人に見つかり、建物から飛び降りれば偶然にも空段ボールなどを積んだトラックが下にいて生き延びてしまい、首をカミソリで切ろうとすればカミソリが折れたりと挙げればきりがないほどだ。
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