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そんな風に何度も自殺を阻まれて俺はもう自殺を諦めてしまった。
かと言って生きることに一生懸命な訳でもない。
将来したいことがあるわけでもないし目指しているものがあるわけでもない。
父親の会社も俺に継がせる気は無いと言われている。
つまり、生きていてなにか意味があるわけでもないのだ。
そんな中で俺が唯一興味を持っていたのは携帯小説だった。
なにも考えずにただ没頭して誰が書いたかも分からない空想の世界に入り込めるような感覚がなにも持たない俺への救済のようにも思えていた。
「それではこれで授業を終わる。予習復習はしっかりしておくように、今から配るのは宿題だからしっかりやってくるように、以上。」
思考に耽っている間に授業が終わり、前の席からぐしゃぐしゃにされて投げられたプリントを受け取って鞄に入れた。
それからとっくに自分で終わらせている場所をなぞっている授業を聞き流しながら午前中の授業を終えて昼休みになったため、俺は鞄を持って教室を出た。
鞄を持っているのは持っていないと教科書等まで破られるからだ。
そして俺は校庭の端にある大木の木陰に来て腰を下ろして携帯を取り出して小説を読み始めた。
…
……
『…』
『ア…』
「ん?」
小説を読むことに夢中になっていたが何かが聞こえた気がして俺は顔を上げた。
「あっ、やっと気付いてくれました?」
そこには小柄な女子生徒が立っていた。
「申し訳ありません、ちょっと集中してしまっていたので、えっと…」
「あっ、桂木(かつらぎ)です。桂木史華(ふみか)。」
「その桂木さんが私になにかごようですか?」
「いえ、特にようがあるわけでは無いのですが…ようが無くては話し掛けてはいけませんでしたか?」
その言葉に少しため息をつきそうになった。
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