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ナツメの会社から依頼されてたらしい陵介の仕事も無事に終わって、翌月の3連休。
俺は溜まりに溜まった有給をもぎ取って、空港に来ていた。
あの温泉の日に取り付けた約束を実行に移すべく、陵介は仕事の合間を縫って本当にフランス旅行の手配を取ってくれた。
俺はあまりそういうことを率先して出来る方じゃなかったから、全部お任せだった。
それで陵介もよかったようで、旅行会社のパンフレットとガイドブックを眺めて時折、俺に話を振る。
そんな感じで、連休プラス有給で一週間のプランをさくっと組み立ててくれて、今に至る。
フライトには早すぎるこの時間に、陵介が空港に来たいと言ったのを不思議に思っていたが、複雑そうな顔をして目の前に立つ男を見て、合点がいった。
「…同じ日にするとか…なんの嫌がらせですか?」
ナツメは俺の顔と、それぞれ一つずつ持っているキャリーバックを見てあからさまに眉をひそめた。
「偶然だって言ってんだろ。…だいたいそれがわざわざ見送りに来た人間に対する言葉かよ」
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