sideR

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指先が、赤い痕の残るその場所に触れた。 『これ、絶対消さないから』 そう言っていつも。 ネクタイを締めれば見えないギリギリの場所に、消えないように何度も。 唇を落としては赤い痕をつける。 こだわる必要なんてないのに、と毎回思うが敢えて口に出さない俺も。 「バカだな、ホント」 小さな独占欲の証を嬉しく思うなんて、相当キてる。 締め終えたネクタイを整えて、机上の資料を手に取る。 気持ちも幾らか引き締まったところで片平さんが戻ってきた。 「ありがとうございます」 湯気のたつコーヒーの脇に、幾つかの洋菓子が添えられていて俺は盆を受け取りながら頭を下げた。 「では私は会議室の準備をしに行くわね」
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