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記憶を手繰っても、知っている名前の中に佐野という苗字はない。
それとも、以前担当していた会社の紹介だろうか。
詳しいことは分からないが、依頼された以上は最後まで責任を持ちたい。
「あ、やべ。時間ねぇな」
悠長にコーヒーを啜っている時間は本当になさそうだ。
俺は片平さんが用意してくれた茶菓子を取り敢えず胃袋に詰め込んだ。
足りている気はしなかったが、何も食べていない状態よりかは幾らかマシになった。
「さて、と。気合、入れますか」
味わう間もなく飲み干したコーヒーカップを置いたのと同時に社内用のケータイが控えめな呼び出し音を鳴らした。
それは受付からで、先方の到着を知らせるものだった。
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