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早すぎるのではないか。
約束の二時間も前だ。でも前にも一度、こういうことがあった。彼女の行動パターンは分かりやすい。
「…早いのはわかってるのよ?」
言い訳するでもなく、むしろちょっと開き直った感のある調子で声を返してきた彼女に、俺はそっと息を吐いた。
「…今開けるよ。どーぞ」
オートロックを解錠し、沙耶ちゃんが上がってくるまでの間にせめて衣服を身につけようと寝室に向かう。
ジーンズと黒いTシャツを着て、半乾きの髪はどうしようもないのでそのままにして、俺は足早にリビングに戻った。
定位置にリモコンを戻して、さっき取ってきてそのままになっていた新聞を片付ける。
掃除しておくと陵介に言った手前、掃除機をかけたかったが、それは叶いそうになかった。
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