sideT

8/19

736人が本棚に入れています
本棚に追加
/403ページ
この部屋は26階だが、上がりきるまでに5分もあれば着いてしまうだろう。 その間に出来ることは、あまりにも少ない。 電気ケトルに水を足し、スイッチを入れたところで玄関のチャイムが鳴った。 相手は分かっているので、モニターを確かめることなく俺は玄関に向かった。 「いらっしゃいませ、どーぞ」 「とーるくん、おはよう。ごめんね、早く来て」 困ったように眉を下げる彼女に、俺は小さく笑って首を振った。 「いいよ。話したいこと、あるんでしょ?」 こうやって約束よりも早く来るときは、大抵嶋田と喧嘩したときだ。 どういう流れで、結婚まで行き着いたのか詳しくは知らないが、喧嘩の原因は生活習慣の些細な違いとか、そんなものが多かった。
/403ページ

最初のコメントを投稿しよう!

736人が本棚に入れています
本棚に追加