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この部屋は26階だが、上がりきるまでに5分もあれば着いてしまうだろう。
その間に出来ることは、あまりにも少ない。
電気ケトルに水を足し、スイッチを入れたところで玄関のチャイムが鳴った。
相手は分かっているので、モニターを確かめることなく俺は玄関に向かった。
「いらっしゃいませ、どーぞ」
「とーるくん、おはよう。ごめんね、早く来て」
困ったように眉を下げる彼女に、俺は小さく笑って首を振った。
「いいよ。話したいこと、あるんでしょ?」
こうやって約束よりも早く来るときは、大抵嶋田と喧嘩したときだ。
どういう流れで、結婚まで行き着いたのか詳しくは知らないが、喧嘩の原因は生活習慣の些細な違いとか、そんなものが多かった。
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