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「くそ、なんなんだ。あいつ…」
ツーツー、と電子音しか発しなくなったケータイに悪態をつく。
どういうつもりなのか、全く分からなくて大きくため息をつくと横から相沢の声が低く響いた。
「ナツメって…大学の後輩くん?」
「なんで…あぁ、沙耶香か。…そうだよ、後輩」
何故相沢の口からナツメの名前が出たのか驚いたが、よく考えれば発信元はすぐに知れた。
心なしか、相沢の横顔が不機嫌そうに見えるのは気のせいじゃないだろう。
「陵介。…やっぱこのまま飲みに行かない?」
どういう会話だったかなんて、相沢には端的にしか聞こえなかったはずだ。
感情を抑えた声が、却って怖い。
沙耶香が与えた情報はいいものではなかったようだ。
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