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◇◇◇◇
「梶くんが遅刻するのって珍しいね」
俺の上司だった片平さんは、未だに俺をそう呼ぶし、社外の人間と接するときは別として話し方も以前のままだ。
跡継ぎを宣言して経営者の勉強をし直した俺は、専務が定年で抜けたあとにその地位を引き継いだ。
初めは平社員のままでいいと言ったが、示しがつかないと言う親父の声に、渋々賛同して、今に至る。
片平さんは上司部下という関係は逆転したものの、俺の補佐という形で同じ仕事に携わってくれている。
「…ちょっと…寝坊しまして」
うまい言い訳が見つからず、歯切れの悪い言葉を返す。
あの後。
結局お互いに止まらなくなってしまって、肌を触れ合わせて達した頃にはもう家を出なくてはならない時間で。
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