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月のない夜だった。
あれからあの橋を何度か通ったけれど、『彼』を見ることはなく、もういっそ幻でも見たんじゃないかって気にすらなっていた。
彼女、美咲ちゃんとは別れることも出来ずにたまに遊んだりした。どれだけ避けても、会うもんは会うし、でも本当に会いたい人には会えないしで。
俺も心のどこかでもしかしたら好きになれるかもしれない、くらいに思い始めていた頃だった。
美咲ちゃんと飲みに行くことになった。
途中で俺が席を立って、戻ると何故か棗が来ていた。
「なっちゃんがどうしても来たいって言うから…」
美咲ちゃんは棗を愛称で呼ぶ。
さっきからやたら誰かとLINEしてるなと思っては居たが、相手が棗だったとは驚きだ。
「すみません、混ざりたくて」
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