ひとつ。

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「いなり様は頭の良いお方でした。 狐としても永く生きておられた故に博識で、培われた経験からいつでも最善の策を導き出しておられました。 金色の髪をゆらりと流し、その背にたゆたう金色の9本の尾。知恵を携えたその瞳は、上級神でさえたじろいでしまわれる程。 神として生を終えるその時まで、稲荷神のため他の生命のためご尽力なされていました。 ・・・あの時、3尾を止めるものがいれば。あの方が築き上げたもの全てが無くなることなどなかったのです。」 そう言って唇を噛みながら俯く目の前の天使。ちくせう、その姿でさえ絵になるんだもんなぁ。 「貴女の人生を壊してしまったことは本当に申し訳なく思います。この頭で良ければいくらでもお下げしましょう。 どうか、我らをお救いください。」 ぐっと頭を下げ懇願する天使。 「・・・私は、頭も良くありません。」 あ、久々に口開いたからか粘つくわぁ笑 「戦とは無縁の平和な場所で生きてきましたし、運動も得意ではないです。そういうファンタジーなやつなんて小説の中の話だと思ってます。 決断力なんてないですし、並外れた特技なんてありません。本当にただの、18になったばかりのなんでもないガキです。 力になりたいとは思いますが、多分私には、できません。」 自分で言っててあれだけど、確実な平和が約束されていたような世界を生きてきた(枯れ果てた)JKに何が出来る? 自嘲気味に笑ってそう言うと、天使は悲しげに俯いていく。
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