ひとつ。

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「へぇー。わかりました。 ・・・なんか、こうして見るとすごかったんですね、前世の私。」 「稲荷神というまだまだ希少な存在でありながら自分より上位の神ですら足蹴にしてしまえるほどの力を持っておりましたから。」 あ、なんかちょっと呆れてる感じがする。 「他に何か質問などはありませんか?向こうについての、何か分からないことや気になることは説明書をご覧になればある程度のことは書いてあります。」 「んー、とりあえずは平気かな?」 「かしこまりました。・・・まずは彩菜様の前世である稲荷神様が使われていた社にお送りします。人里離れた山奥にございますので初めのうちは誰かに見られることはないでしょう。 最後に、貴女にお願いしたいことがあります。」 「これだけ良くしてもらったし、なんでも頑張りますよ~」 「ありがとうございます。 一つ、行き過ぎた力は身を滅ぼします。まずは力の制御を学んでください。 二つ、稲荷神の再興。こちらはお力を完全に制御した後で構いません。詳しいやり方は説明書をご覧下さい。 三つ、世界を、残りの余生をお楽しみください。」 「・・・はい!」 「『開門』」 天使さん、リオルさんが安心したように微笑み唱えると、木製の扉が現れた。 「この扉からあちらの社へ行けます。」 「・・・何から何まで、ありがとうございます。」 「それはこちらの台詞ですよ、彩菜様。 貴女の人生を台無しにしてしまったのに。」 困ったように眉を下げるリオルさんは、それでもやっぱりイケメンだった。 「・・・コホン。それ でも私は、貴方に連れてこられて良かったと思っていますよ。夢にまで見た魔法の世界ですもの、感謝こそすれ、恨むことなどありません!」 「・・・お人好しですね。」ボソッ 「ん?・・・よく聞こえなかった。」 「いえ、なんでも。ありがとうございますと言ったのです。 さぁ、時間がありません。 お行きなさい。」 「行ってきます」 ギィっと音を立てて開いた扉に勢いよく飛び込む。パタリと閉じた音と共に、私の意識はまたブラックアウトした。
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