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マネキン
学校帰りにその服を見かけた。
ショーウインドーの中のマネキンがまとっていた、とても素敵な服。
一目惚れしたけれどさすがのお値段で、普段のお小遣いじゃとても買えない。もちろん、おねだりしても無駄だと思う。
だから、次のバイト代を全部はたいて買おうと思った。
店に入り、店員さんに予約はできないかと申し出る。幸いにも快諾してくれて、一週間後、バイト代が入ったら買いに来ることに決まった。
でも結局、私がその服を買うことはなかった。
一週間後にお店に行ったら、取り置きしておいてもらった服がなくなっていたのだ。
店長さんまで出てきて、誰か、間違って売ってしまったということはないかを確認してくれたけれど、誰もあの服を勝手に売ったりはしていなかった。
その時に、マネキンが一体消えていることに店の人達が気づいた。
消えたのはあの服を着せていたマネキンで、取り置きのために引っ込めた後、暫くそのまま倉庫に置いてあったらしい。そうしたら、今探してもどこにもないとのことだった。
泥棒が入ったにしても、服はともかく、置いてあったマネキンまで盗んで行ったのはどうしてだと、店の人達が首を捻る。でも私には、マネキンが消えた理由も服がなくなった理由もなんとなくだけど判っていた。
あの服、マネキンのあの子が着て逃げたんだ。
だってあの日、ウインドーの中で笑ってた。『私にとっても似合ってるでしょう?』と言いたげな、誇らしげな目をしていた。
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