夕暮れに染まるまで

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「透花、大丈夫だ。俺がいる。俺がここにいるから。大丈夫だ、大丈夫。ずっと一緒にいるから……」  苦しげにしゃくりあげている透花に俺の言葉が届いているかは分からない。それでも大丈夫、大丈夫と繰り返して、震える背中をさすり続けた。 「夕輝……」  何度も咳き込んで、荒い呼吸を繰り返した後、やっと落ち着いたらしい透花がぐしゃぐしゃになった顔を上げた。 「ありがと」  俺はこすりすぎて真っ赤になった透花の目元をなでながら笑った。 「ひでぇ顔……」  うっすらと微笑んだ透花が負けじと俺の鼻をつまむ。 「もう。人の事言えないでしょ」 「やっぱり、笑ってる方がお前らしくていいよ」  透花の指をそのままにこもった声で俺が言うと、透花が顔を真っ赤にして鼻から手を離した。 「なんか今日の夕輝、変」  両の人差し指がせわしなく髪を巻き付けている。 「変とは何だ」 「だって変じゃん! なんか……優しいし」 「お前、俺がいつもは優しくないみたいに……」  本当はもっと早く、こんな風に本音で向き合うべきだったのかもしれない。そうしたら今胸にある微かに苦い後悔もなくなっていただろう。そっぽを向いて突っぱねてきたけれど、透花が変だと言った優しさで、俺はずっとこの幼馴染のことを見つめてきたのだから。 「気分とか悪くないか?」 「うん、平気」 「ここはちょっと暑いな。日陰に行こう」
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