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図書室や食堂、そして陸上部の部室など校内を一通り見て回った俺達が最後に訪れたのは屋上だった。ここは本来立ち入り禁止なのだが、俺達は先生の目を盗んでは度々来ていたのだ。
去年の夏、古びたドアがヘアピンで簡単に開くのを発見したのは透花だ。俺はいつ見つかって怒られるか分かったもんじゃないと反対したのだが、二人だけの秘密にしようと耳打ちする透花の笑顔一つで、結局何もかも承諾してしまったのである。
見慣れたドアを開いた瞬間、眩しさが一直線に目を貫いた。青空の下さらされた白い床が一面に光を反射している。細めた目でさらにその奥を見れば、柵の向こうには俺達の住む町がどこまでも広がっていた。
「いい景色だなー」
まき散らされた煌めきの中を進み、柵に手をかける。
「あれ、夕輝の家だね」
「え、どこ」
「ほら、あのビルの後ろ。ちょっと隠れちゃってるけど」
「あ、わかった。そんであそこ……透花の家」
指さしながら隣を見ると、同時に透花も俺の方を向いた。吐息が触れそうなほど近い距離で見つめあう。顔が一気に熱を持つのが自分でもわかった。うまく息ができない。
絡まる視線を逸らせないまま固まっていると、目の前にある透花の瞳がふっと柔い色を見せた。
「前、一緒に……お弁当食べたこともあったね、ここで」
細い指先が肩に揺れる髪を巻き付けていく。照れた時の透花の癖。
「誘ってもあんまり来てくれなかったけど」
「しょうがないだろ。一年の時はクラスも違ったし、他の奴らだって色々」
「うん。だからね、ここ見つけた時はラッキーって思ったんだ。ここだったら誰にも見つからないし、だから夕輝もたまに昼休み来てくれて……」
「え……?」
俺はその言葉の真意を問うように聞き返す。だってその言い方はまるで――けれど透花はそれ以上何も言わず、景色の方に目線を戻してしまった。
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