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もうすぐ午後10時になる。
レジの真向かいにある時計を見て、そしてチラっと入口を見た。
自動ドアが開くと、若いカップルがそのまま俺のレジへと向かってきた。
「えーっと、124番。お前は?」
「私はセーラムメンソライト」
「124番と77番ですね」
俺が後ろを向くと、既に涼さんが棚からその番号のタバコを取り出して、さっと俺に渡す。
俺は涼さんに笑顔を向け「ありがとうございます」と答え、手際よく会計を続けた。
会計を済ませ、客が店から出るのを見届けてから時計をもう一度見る。
あと…1時間か…
意外と不安も緊張も感じなかった。
この1ヶ月間、毎日深い闇の中に吸い込もうとしてぐるぐる渦巻いていたブラックホールは完全に消滅していた。
「ちょっと休憩してきますね」
「あいよー」
涼さんは俺の顔を見ずにそう答え、俺は事務所へ戻ろうとすると、
「おーい、ナオー」
と、涼さんは俺を呼び止め、拳を握り俺に突き出しニッと笑った。
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