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おじさんは震える手で雑誌と取りゆっくりとパラパラと雑誌をめくり、無事に3冊読み終えると、ドリンクコーナーへと向かっていった。
ドリンクコーナーに到着すると、まず商品を吟味し扉に手をかける。力が入らないのか苦労しながらもなんとか扉を開け、缶コーヒーとビールを床に置いたカゴにいれた。
片手でカゴを持てないのか両手でカゴを持ち上げると、少し引きずるようにして惣菜コーナーへ進んでいった。
そこからは俺の視界から死角になりおじさんの姿は見えなくなる。しかし今日は涼さんがレジの下からジェスチャーで様子を知らせてくれた。
今日はおにぎりみたいだ。
固唾を飲んで待っていると、ついにおじさんの姿が現れた。
後は俺の所に来るだけだ。
俺は一度深呼吸をしてその瞬間を待つ…
その時だった。
「おーい、店員さん」
その声にハッと前を向くと1時間ほど前に対応したカップルがレジの前に立っていた。
そして男の方が手元に持っていた封の空いたタバコを差し出してきた。
「なんか買うやつ間違えたんだよね。交換してくんない?」
差し出されたタバコを見ると封は切られているだけでなく、1、2本既に吸われているものであった。
「あのお客様、こちらですが既に吸われてるので、交換はちょっと…」
「は!?お前何言ってんの?客が変えろって言ってんだよ」
まさかの逆切れのクレームに俺は思わず面を食らってしまう。
このクレームがタチの悪いものだということは経験的に理解した。そしてそういったクレームの場合、大抵、時間を食うことになることも容易に想像がついた。
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