コンビニ物語~カウントダウンシガレット~

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おじさんがカゴを持ち上げようとするけど、なかなか持ち上がらない。だけど俺は手伝うことをせず、ひたすらその時を待った。そしてようやくカゴの底がレジに接地した。 俺は一呼吸置いてから、手際よく商品を手に取ってリーダーで読み取っていく。 最後かもしれない作業に心なしか手が震える。 いつの日か初めておじさんがやって来た日 俺がおじさんのタバコの買い方に気がついた日 カウントダウンを始めた日 勝手に記念にしたゾロ目の日 女性に支えられながらも欠かさずに来てくれた1ヶ月間 これまでの思い出が一瞬にして脳裏を駆け抜けていくと、これまで堪えてきたものが溢れ出しそうになってきたけど、ぐっと堪える。 最後の缶コーヒーを読み取り終えると、ついにその時がきた。 「…あと、1番のタバコを1箱お願いします」 物静かな落ち着いた声で、いつもと変わらない優しそうな声で、おじさんはいつものようにタバコを指定した。
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