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もうすぐ午前10時。
よく晴れた日曜日に俺は春の陽気が漂う並木道を歩いていた。
「ふふ、ナオなんか嬉しそう」
彼女のスミレは嬉しそうに腕にくっつく。
「え?そう?」
「うん。目腫れすぎてブサイクだけど」
「う、うるせーやい」
太陽が木々の隙間を縫って木漏れ日となり、その光は右手に持つ花束にキラキラと反射する。
「あっ、もう面会時間じゃん!急がないと!」
スミレが俺の左手をぐいと引っ張った瞬間、ポケットからタバコがこぼれ落ちる。
通称1番のタバコ。
そしていつかおじさんが天国に行く時に渡す約束をしたタバコ。
それはもうちょっと先の話になるといいな。
「バカっ!引っ張るなって!」
そう言いつつも、スミレの足並みに揃えて、目の前に見えるおじさんのいる病院に向かって駆け足で走り出した。
これはただのおじさんと俺の物語。
そしておじさんと俺のもう少し続く大切な物語
コンビニ物語
~カウントダウンシガレット~
ー完ー
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