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ー今を遡る事二十年程前ー
寒い真冬の最中
街ではにぎやかに『冬祭り』が行われてる夜に幼なじみに誘われて家を抜け出した。
連れられて行った先は『立ち入り禁止』の札が朽ちた先の土手の向こうで、大きな木の根を身軽に登っていく幼なじみの之也を必死で追いかけた。
「ユキ…まって。のぼれない…」
「ったく。ほら」
差し出された丸っこい手を握った瞬間、グイッと引っ張られる。
「大丈夫?」
「う、うん。」
ポンって頭の上にその掌が乗っかった。
「もう少しだから。」
ユキの優しい表情と強く握られた掌が暖かくて自然と不安も消えて、いつもだったらこんな暗い所、恐くて仕方ないのに頑張れた。
「ほら、ついた」
背の高いススキの群生をどかした先には、街の景色。いっぱいに宝石をちりばめた様な色とりどりな煌めきが現れた。
「っわっあ…」
「きょうは街中、あかりがいっぱいついてるから。高い所から見るときれいなんだよ」
私の驚き顔に幼なじみが嬉しそうに鼻を少し啜った
「…ここ知ってんのは、俺とサナだけ。」
その言葉に頬がユルユル。繋いでる手を今度は私が強く握った。
「ありがとうユキ!」
「…一年に一回だけどね。また…来る?」
「来る!来年も、その次もずーっと来るよ!」
約束、と言葉に出しながら二人で小指を絡ませた。
「私、ユキの事大好き!ずっと、ずっとだよ!」
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