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思わずブッて吹き出す俺に顔を真っ赤にするサナ。
「だ、だって!ほら、見て?受付嬢の人、二人とも私の事、凄い睨んでるよ?どっちを睨み返していいかわかんないじゃん!」
ああ…確かに。受付に居てそれはヤバいでしょって位に二人とも鬼の形相だね。
「それで言ったら、両方じゃない?俺、あの二人ともに告られてる」
「そっか…ってええっ?!」
「や、そんな驚く?」
たじろぐサナに「どうすんの?」って笑ったら口を真一文字にしてまたゴクリと生唾を飲み込んで、「負けないよ!」と再び鬼の形相の受付嬢に向き直った。
「と、とりあえず、睨み返した!行こう、ユキ!」
「はいはい。」
あ~面白っ!
…この調子で、イケメン観察なんて忘れるくらい、俺に必死になってくれたらいいのにね、この人が。
なんて俺の甘い考えはすぐに打ち砕かれる。
エレベーターで上がった先のラウンジにはソファに腰をおろして和気藹々と語らっている結城さんと斉藤さんの姿。
「はわわわ…同じメーカーの缶コーヒー飲んで語らってる…。」
まあ…ゆっくり夢中になって頂きますよ。
「あ、沙奈ちゃん!またユキと手を繋いで!俺も繋ぐ!」
「侑人、大丈夫だってユキの反対側の手、空いてるよ?」
「具合よくなったの?言ってくれれば車で迎えに行ったのに。」
「おはようございます、田中さん。この通りユキは私がしっかり守ってここまで連れて来ましたから大丈夫ですよ。」
…一体何から俺を守ろうとしているのか。
ズレ具合が面白くて少し離れた所で笑ってたら、隣に来た結城さんが溜め息をついた。
「相変わらずモテるなー立花さん。」
「まあね。」
「でも俺ももう少し頑張らせてもらおっかな。」
「や、もう諦めてください。それでなくても本人があんなで大変なんだから。」
俺の返答にニヤリと唇の片端をあげると、相変わらずソファに座って含み笑いしている斉藤さんの所へと戻って行った。
本当に手強い、結城さんは。鈍そうに見えて全部把握してんだもん。
まあ他の人達だって充分手強いけどね。
俺にとっちゃ、会社は戦場だよ、まさに。
…まあとにかく、とりあえず今日も目の前の敵(イケメン)達と戦うしかないね、俺は。
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~『イケメン男子にはご注意を。』fin~
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