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「あの、カクテルの代金は?」
バーテンさんに尋ねた。
「あなたの重荷が少しでも軽くなったのなら、要りません」
親切なバーテンさんに礼を言って、高槻さんと店の外へ。
数時間前のように、タクシーに乗り、高槻さんの仕事用マンションに向かった。
☆
「今夜はこの部屋で我慢してくれるかな。明日実家に君を連れて行くよ。母にも紹介しよう」
高槻さんは、母親や口の固い同僚の一部に、ゲイだとカミングアウトしている。
俺は偏見が怖くて、周囲に知られないようノンケっぽく振る舞ってきた。
堂々として揺るがない自信を感じるのも、器の違いだろうか。
「高槻さんは帰らなくて大丈夫ですか?」
「君を一人ぼっちにすると思うかい?寂しそうな顔をしているよ」
高槻さんの言葉に、泣いてしまいそうだった。
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