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鈴村くん……
夢の中、懐かしい少年が微笑んでいた。
『君は、鈴村くん?それとも高槻さん?』
『どっちも僕だよ。早瀬敬吾君』
鈴村くんに恋をしたのは、小学生の俺。
高槻さんに惹かれたのは、売り専ボーイ『ゆう』と名前を偽ってたもう一人の俺。
『どっちも君じゃないか、何を迷っているの?』
『迷ってない。どちらの俺も、例え容姿が変わっても、薫さんが好きだ』
なのに、手放しで喜べないのは何故だ?
『敬吾君なら構わないよ』
『けいごならいいよ』
『けいごが好きなんだ』
みのり……
明け方目を覚ました時、俺を抱き締めていたのは高槻さんだった。
「薫さん?」
「大丈夫、傍に居る。安心してお休み」
この人の腕の中は、凍えた体を暖めてくれる。
この人の言葉は、ささくれた気持ちを穏やかに戻してくれる。
甘えていい。
忘れたって構わない。
みのり、
君が俺を裏切ったんだ。
だから、俺は高槻さんを選ぶよ。
約束は守れない。
みのり、
したたかな君なら、俺が居なくなって大丈夫さ。
……きっと。
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