秘密の扉が開くとき 第五夜

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鈴村くん…… 夢の中、懐かしい少年が微笑んでいた。 『君は、鈴村くん?それとも高槻さん?』 『どっちも僕だよ。早瀬敬吾君』 鈴村くんに恋をしたのは、小学生の俺。 高槻さんに惹かれたのは、売り専ボーイ『ゆう』と名前を偽ってたもう一人の俺。 『どっちも君じゃないか、何を迷っているの?』 『迷ってない。どちらの俺も、例え容姿が変わっても、薫さんが好きだ』 なのに、手放しで喜べないのは何故だ? 『敬吾君なら構わないよ』 『けいごならいいよ』 『けいごが好きなんだ』 みのり…… 明け方目を覚ました時、俺を抱き締めていたのは高槻さんだった。 「薫さん?」 「大丈夫、傍に居る。安心してお休み」 この人の腕の中は、凍えた体を暖めてくれる。 この人の言葉は、ささくれた気持ちを穏やかに戻してくれる。 甘えていい。 忘れたって構わない。 みのり、 君が俺を裏切ったんだ。 だから、俺は高槻さんを選ぶよ。 約束は守れない。 みのり、 したたかな君なら、俺が居なくなって大丈夫さ。 ……きっと。
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