秘密の扉が開くとき 第五夜

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再び目を覚ましたのは、昼近く。 壁掛け時計の針が、11時を指していた。 隣にいるはずの高槻さんが居ない。 「おはよう、敬吾君。よく眠ってたね。気分はどう」 短い廊下へ続くドアが開き、ちょうど戻ってきた高槻さんは、珈琲ショップの袋を抱えていた。 「はい、大分落ち着きました」 「朝食を買って来たよ。一緒に食べようか」 ベーグルとテイクアウト用の紙カップに入ったホット珈琲を、ベッドまで運んでくれる高槻さん。 「ありがとうございます」 半分だけ開けたブラインドから光が差して、寝起きの眼に眩しかった。 「薫さん、俺、ルームシェアは解消しようと思うんです」 「学生の彼とも?留学までは一緒に暮らすんじゃなかったのかな?」 「自信が無くて……。みのり、ルームメイトですけど、俺には彼が何を考えているのかわからない」 「珈琲が冷めてしまうね。食べながら話そうか」 「はい」
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