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高槻さんの電話は、ディナーのお誘いだった。
「みのり、早く支度してくれよ」
場所は、俺がウリセンボーイの『ゆう』だった頃、
『かなた』と偽名を使っていた高槻さんの指名を受け、
お泊まりコースで出張した西新宿のシティホテル。
夜景の綺麗な高層階レストランでの食事会。
勿論、デートではない。
俺が別れを告げた時、いつか友人として会おうと約束した。
高槻さんは、俺への気持ちを整理できたのだと思う。
すでに、夏仕様のスーツに着替えた俺。
みのりはまだ、ベッドの上でぐずっていた。
「けいごの元カレなんかに会いたくない」
「俺は、結局高槻さんを選べなかった。君を忘れられなくて……。それに俺達あの人にはお世話になったじゃないか。
まひろくんに出逢えたのも、高槻さんのおかげだろ」
説得するも、みのりは拗ねている。
「行きたくない」
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