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ホテル内に一歩足を踏み入れると、繁華街の猥雑さが一変する。
このホテルは、高槻さんが仕事柄みで利用していると聞いていた。
「敬吾君」
名前を呼ばれた方を振り向くと、高槻さんが近寄ってきた。
きちっとしたスーツに、趣味のいいネクタイをして、爽やかな笑みを浮かべている。
「薫さん」
「急で申し訳ない。来てくれて嬉しいよ。みのり君も元気そうだね」
俺は高槻さんと再会の握手をした。
みのりは相変わらずご機嫌斜め。
俺の腕にしがみつき、挨拶もしない失礼な態度だった。
「すみません……」
謝罪する俺に、高槻さんは大人の対応をしてくれた。
「構わないよ、少し早いけど、食事しながら話そうか」
「はい。行こうみのり」
変わらない笑顔で接してくれる高槻さん。
別れを告げた背中に、新たな友情を確信できた。
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