秘密の扉が開くとき 第五夜

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『CLOSED』のプレートが掛けられた『INNOCENT』の扉は、ノブを回すと簡単に開いた。 そっと中に入ったが、天井照明は点いているものの、バーテンダーの姿がない。 コソ泥みたいだなと自嘲しつつ、挨拶をしようとした時、 「今晩は、早瀬様」 スタッフルームらしき奥のドアから先刻のバーテンさんが出てきた。 「えーと、突然すみません、少し休ませて貰えませんか?」 黄色味がかったライトの下、バーテンさんは相変わらずニコニコ笑顔を浮かべている。 「どうぞ、こちらへ」 カウンターではなく、奥の小さなテーブルに案内された。 荷物を足元に降ろすと、気持ちまで軽くなった。 「飲み物をお持ちしましょう」 「あ、棚卸しですよね。続けて下さい」 「簡単な在庫管理ですのでもう終りました。大丈夫ですよ」
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