秘密の扉が開くとき 第五夜

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なんか不思議な人だな。 俺が来るのをわかっていたような対応ーー 暫くして、ワイングラスみたいな形状のグラスに、クリームの浮かんだホットコーヒーが運ばれて来た。 「アイリッシュコーヒーです。どうぞ」 「ありがとうございます」 ウィンナコーヒーかカプチーノみたいだ。 しかし、味はしっかりウイスキーの余韻が残るホットカクテルだった。 コーヒーの香ばしさ、生クリームの滑らかさ、ほのかな甘味に癒される。 「アイルランドウイスキー以外を使用した場合は名前が変わるんですよ。ゲーリック、ロイヤル、ノルマンディなどです」 「へえ、酒は奥が深いんですね」 「ええ、私もまだまだ勉強不足です。ではごゆっくり」 バーテンさんは俺を気遣ったのか、スタッフルームに消えた。 疲れていたせいで、アイリッシュコーヒーを飲み干す頃には、テーブルに伏して眠りに落ちてしまった。
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