これモアイ

　御師様が、インフルエンザに罹患したらしい。

「こ……胡蝶、わ……私の死体には荒縄をかけて……」

「はいはい、三角木馬型の棺桶に詰めてほしいんでしたね」

「いや、三角木馬型の棺桶ってどんなの……」

「はいはい、仏壇の蝋燭はＳＭプレイ用の赤い低温蝋燭がいいんでしたね」

「こ、胡蝶……私の話、真剣に聞く気ないね……？」

「はいはい、今時は薬一発で治りますからね、インフルエンザ」

　病院の待合室のソファーで診察を待つ間も、高熱に侵されてうんうん唸る御師様の隣で、私は適当に相槌を打っていた。

　間に濡れガーゼを挟んだ二重マスクで口元を追っているせいで、自分の声がモゴモゴとくぐもって聞こえる。