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「だから自分が死んだ時のことを考えるのは、もうちょっと先で大丈夫ですよ、御師様。
『屋根裏部屋の幼妻達』とかいう小説の隠し場所を変えようとか、無駄な足掻きはしなくていいですからね」
「こっ……こここここ胡蝶っ!!
ど、どうしてそのタイトルを……っ!!」
「バレていないとでも思っていたんですか?
熟女スキーな御師様にしては珍しいタイトルだなぁと、指の隙間からしっかり拝見させていただきました」
だがくぐもっていようともモゴモゴしていようとも、その舌鋒が鈍ることはない。
御師様が弱っているからと手加減をすることもない。
ドMでヘムタイな御師様にとっては、これも栄養剤の一種なのだから。
自分の憂さ晴らしをそんな風に転嫁しながら、私は待合室の中へ視線を走らせた。
インフルエンザの流行る時節のせいか、待合室はそこそこに混み合っている。
「野井田区論さーん」
「神谷信二さーん」
次々に名前が呼ばれて、そのたびに人影がもぞもぞと移動していく。
だけど肝心な御師様の名前は中々呼ばれない。
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