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どう異常だったかと言えば、脳内麻薬とされるエンドルフィンやドーパミンに始まり、セロトニン、エンケフェリン、カフェイン、ギャバ等々....通常の状態では、精製される筈のないモノも含めて、無数の脳内物質の大量分泌が確認されるといった形で異常だったのである。
しかも、その分泌量は常人の約5倍と言う異常数値を叩き出していたのだ。
そして、調査チームの現段階での公式発表では、こう結論付けられていたである。
【主に男性が笑い人症を発症する傾向が強いと思われる(まだ女性に発症事例が無い事から)。
また、現段階での発症者は発症前、内気な者が主となっている。
この事から、男性で内気な者が笑い人症は発症率が高まると思われるが現段階では、そう断言する事は出来ない。】
――と。
そう....笑い人現象については、病として認識を得たと言う以外、未だ何も解明されていなかったのだ。
未だに――・・・・・・。
――――――
――――
――
(相変わらず、公式発表は去年からの進展無しか....。)
彩音【あやね】は笑い人症調査チームの公式発表をパソコンで確認しつつ溜め息を着いた。
あの銀座の事件から5年――。
蜜葉・彩音【みつは・あやね】は当時の事件の目撃者であると同時に――。
被害者でもあった。
当時は、高校二年生で年齢は17歳になったばかり――。
そう....あれは秋の事である。
彩音の家は幼い頃に流行り病で母を亡くし、兄弟も居ない事から父と二人暮らしだった。
だが当時、彼女には頼れる兄の様な人が居たのである。
高宮・秀一【たかみや・しゅういち】。
彩音と同じく、片親しかいないお隣に住む男性。
年齢は20歳。
彩音より3つ年上の男性だった。
秀一は彩音とは逆で、幼少時代に父親と妹を事故で亡くしており、彼母親と二人暮らし。
そんな境遇の類似もあってか、秀一は彩音を実の妹の様に、可愛がってくれたのである。
だから彩音は、父が仕事で遅くなっても一人ではなかった....。
寂しくなかった....秀兄【しゅうにい】が、何時も一緒に居てくれたから。
あの瞬間が訪れるまでは――。
彩音は、自宅のパソコンのモニターを見詰めながら、あの忌まわしき記憶に一瞬、身を震わせた。
あの事件――。
全ては、あの事件により....。
あの瞬間から狂ってしまったのだ。
思い出すだけで、苦痛を感じるあの事件――。
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