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銀座笑い俺は男通り魔殺傷事件・・・・。
彩音は、あの現場に居た。
あの日、彩音は秀一に頼んで買い物に付き合って貰っていたのである。
その日、仕事が休みだった秀一は彩音の頼みを笑顔で引き受けてくれたのだ。
そして彩音達が買い物の為、銀座を歩いていた時である。
不意にあの瞬間は訪れた。
笑いながらハサミを持って、襲いかかってくる一人の男。
鈴川・結城――。
あの瞬間、咄嗟の事に対応出来ず彩音は身を硬直させた。
――――――殺される――――――
彩音は本能的に、そう悟りハサミがその身に到達する瞬間を待つ。
しかし....その瞬間は何時まで経っても訪れなかった。
何故なら彩音を抱き締める様に庇った秀一の体が、彩音をハサミの脅威から守ってくれたからである。
「あ........彩ちゃん怪我は無い....?」
秀一は彩音に、そう言葉をかけながら微笑む。
だが、額には大量の脂汗が滲み出ている事から、痛みに耐え無理して微笑んでいる事は明らかだった。
そして....鈴川は笑いながら、そんな秀一の背中をハサミて滅多刺しにしたのである。
その度に秀一の口から血液が洩れだし、顔が苦痛で歪むが秀一は、それでも身を挺して彩音を守った。
しかし....そんな状況にも突然、終わりの時が訪れる。
それは本当に突然だった。
不意に、鈴川が秀一にハサミを突き立てるのを止めたのである。
彩音は一体、何が起こったのかが分からず状況を確認するべく、秀一の右首筋の隙間から覗き込んだ。
だが、その瞬間、鈴川は彩音の顔を見るなり悪意の無い笑みを浮かべる。
そして、彩音が鈴川の顔を見て怯えた瞬間、彩音のそんな表情を待っていたかの様に、鈴川は秀一の頭部に向けてハサミを降り下ろした。
直後、秀一は大量の血液を吐血し動かなくなる。
徐々に彩音を抱き締める力が、秀一の腕から抜けて行く――。
鈴川は、そんな無惨な光景を微笑みながら見守ると、秀一の体からハサミを一気に引き抜いた。
直後、秀一の頭部と首の付け根の傷口から大量の血液が噴水の如く降り注ぎ、彩音の顔を血で染め上げる。
(嘘だ....。
こんなの悪い夢だ....。)
彩音は現実を受け入れる事が出来ず、秀一に声をかけた。
だが....当然、返事はない。
その後、彩音は薄れ行く意識の中、ただただ鈴川の笑い声が響き........気が付けば数人の警察官が、鈴川を射殺していたのである。
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