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私が泣き叫ぶ中、笑う男――。
私の手は血に塗れ、赤く染まる。
いや、手....のみではない。
顔も胸も赤く染まっており、生暖かく粘り気のある感覚が全身にまとわり付く。
そして、鼻腔に鉄臭い匂いが染み付き、口内に鉄臭い味が充満した。
「いや....。
いやぁぁぁぁぁぁ――――!!!」
泣き叫ぶ私....。
そんな私を見下ろし、笑う男――。
だが、その直後、その男の胸数ヵ所に穴が空き、大量の血が降り注ぐ....。
それでも男は笑っていた。
死ぬ直前まで....。
――――私を見下ろしながら・・・・――――
――――――
――――
――
「はっ――!?
はぁはぁ....はぁ........。」
私は全身、汗塗れになりながら目を覚ました。
悪夢――。
あの日から、この5年間見続けている悪夢である。
最近は月に2、3度見る程度だが事件当初は毎日、見ていた悪夢だ。
それは拭いされない血と、恐怖の記憶。
未だ消えぬ心の傷痕....。
恐らく私は、未だにあの時の事を受け入れずにいるのだろう。
いや、それ以上に納得出来ていないのだ。
だから私の時間は、止まっているのかも知れない。
だが....。
今の私にそれを考えている余裕はなかった。
もう既に午前8時を回っている――。
既に出社、1時間前を切っているのだ。
(この時間じゃ、マトモに朝御飯を食べている暇は流石に無いか....。
取り敢えず、シャワー浴びて汗だけでも流さないと....。)
私は足早に、うがいと歯磨きを済ませると即座に、浴槽の上に設置されているシャワーからお湯を出す。
程好い温度のお湯が適度な量で、私の頭上に降り注いだ。
出社までを考えれば、体を念入りにに洗っている余裕は無いだろう。
私は軽く体を洗い、汗を流し終えると手早く着替えを済ませた。
正直、こんなのは日常茶飯事ではあるが、昨日の寝不足も祟ってか、今日は一段と寝起きが悪い。
しかも....ここ最近、見ていなかったあの悪夢に、うなされて起きた朝なのだから目覚めの悪い事、この上なかった。
お陰で何時もなら、朝食ぐらいはマトモに取る時間ぐらいはあるのだが今日は、パンすら焼いている暇も無いだろう。
(仕方がない........。
時間もないし今日は、シリアルにしよ。)
私はフレークタイプのシリアルを深皿に適量、放り込むと冷蔵庫から豆乳を取り出し皿に流し込んだ。
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