笑えぬ日常

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私はふやけて食べやすくなったシリアルを、スプーンで一気に口内に掻き込むと、空になった皿を軽く水洗いし、食器洗浄機へと放り込む。 そして私は鞄を掴むなり、施錠し家を出た。 取り敢えず、電車事故など無い限り遅刻する事は無いだろう。 私は足早に駅に向かうと、電車を乗り継ぎ東京駅へと到着した。 ここに私が勤める会社がある。 私が勤めている会社は所謂、新聞社であるが新聞社としては、中小企業の部類に属していた。 「御早うございます。」 「御早う! おや....? 蜜葉くん、今日は一段と消耗してるね? また変な夢でも見たのたかい?」 「え....えぇ....まぁ、そんな感じです。」 出勤して室内に入り挨拶するなり、浜崎【はまさき】課長に鋭いツッコミを入れられ私は辿々しく、そう答える。 まぁ入社して3年も経ってるから、私の事をそれなりに知っていると言うのもあるが、それ抜きにしても浜崎課長は妙に鋭い所があった。 それが新聞社に勤めてのキャリアによるものなのか、それとも浜崎課長が元来より持ち合わせている才覚なのかは、私に判断しようも無いのだが....。 何にせよ、今日も笑えない1日を過ごす事になるのだろう。 いや、明確には笑えないのは私自身――。 私の心にポッカリと空いた穴が、それをさせてくれないのである。 あの日から、私は笑いを喪失した。 笑うにより5年前の体験によるトラウマが呼び起こされてしまう為、防衛本能により笑いに関する感情が、喪失状態にある――。 そんな事を医者に言われてはいるが正直、それが全てとは私には思えなかった。 何故なら、医療は万能ではないからである。 それはこの3年間、仕事をして嫌と言う程、見てきた。 そもそも私が、この真鏡【しんきょう】新聞社に勤めたのには理由がある。 その理由とは、情報関係の仕事に就けば笑い人症についての情報が、逸早く手に入るからだ。 いや、本当ならば笑い人症に直接、関与する状況の多い警察官になりたかったのだが、残念な事に面接の段階で落とされ警察官にはなれなかったのである。 故に私は、新聞社と言う情報に精通した職に就くことにした訳ではあるが........。 世の中、そう甘くはなかった。
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