笑えぬ日常

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大半の新聞社が、私が5年前に負った精神的傷害を理由に一旦は採用していながらも、私の採用をことごとく、取り消してきたのである。 だが....真鏡新聞社だけは私の精神的傷害を知って尚、採用してくれたのだ。 そして、入社より3年....。 私は仕事の合間を縫って、笑い人の情報を集め続けたのだが....。 この3年で、私が手に出来た情報はタカが知れていた。 私が知り得た事は、笑い人症を発症している者は現在、男性のみであると言う事と――。 ウィルス等による、伝染性のモノでは無いと言う事。 それと笑い人化した者は皆、元々、自殺願望があり治療した前歴があると言う事ぐらいだろう。 更に笑い人症を発症した者の共通点としては、脳内物質の分泌量が過剰だと言う事であるが....。 それらがどう繋がっているのか、現段階では分かりようもない。 ただ、これだけは明確だった。 笑い人症発症者が年々、増加傾向にあると言う事だけは――。 (結局、未だに何も分からずじまいか....。) 私は一人、溜め息をつく。 そして、自分の席に座るなり私は、パソコン内の取材データの整理を始めた。 取材の内容は断片的な情報の羅列なので、かなり編集する必要性がある。 (あと、何時間くらいで終わるかな?) 私は膨大な量の取材内容に、編集を加える為、ひたすらにキーボードを叩きまくった。 その直後、不意に笑い人症の取材内容が私の目の前を通り過ぎ私はつい、キーボードを叩く手を止めてしまう。 だが、その直後だった....。 不意に私の後ろから、声が響く。 「また笑い人症の所を見てるのかい、彩ちゃん?」 そう私に向けて、声を発したのは篠山【しのやま】さんだった。 篠山さんのフルネームは篠山・孝史【しのやま・たかし】。 会社の先輩である。 真鏡新聞社に入社した際、私に仕事のノウハウを教えてくれたのも、篠山さんであり私にとって直属の上司だった。 「えぇ....ちょっと、気になったので。」 私は篠山さんに、申し訳無さそうに答えを返す。 「そうなんだ....。 俺も合間を見て調べてるのから、何かあったら教えるよ。」 「有り難うございます、篠山さん――。」 私は篠山さんの顔から視線を、やや下に反らしながら、御礼を言葉を述べた。 私は篠山さんが、自分の席に移動して行くのを確認すると、再びパソコンのモニターの方へと向き直る。
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