笑う男

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僕は立ち上がると御礼を言いながら、加賀美屋の鞄を拾い上げると、その鞄を持った右手で加賀美屋の頭部を殴り付けた。 直後、ゴキッ――! そんな音が響き、加賀美屋の頭部は僕から見て左側に不思議に曲がる。 次いでに言うなら、彼女は鞄で殴られた左側頭部は陥没し、失禁しながら吐血とまぁ、騒がしい限りだ。 (うわっ....みっともないね。 もう終わりなんだね? でも最高に楽しかったよ、加賀美屋さん。) 僕は泡を吹いて、小刻みに体を痙攣させる加賀美屋を笑いながら見下ろす。 これで同僚は居なくなった。 しかし、まだモノ足りない....。 僕は、まだまだ満たされていなかった。 そうだ....僕よりも幸せな奴なら、まだまだ居るじゃないか....。 ――――――ここに、一杯?―――――― 僕は加賀美屋の鞄の中に手を突っ込み、新たな得物を取り出す。 尖って固い何か――。 取り出して見ると、それはハサミだった。 (良いもん持ってるね、加賀美屋さん?) 僕は取り敢えず周囲を見渡すと、やや後方から笑い声が聞こえてくる。 誰かと話している一人の少女。 制服を着ている事から考えて、彼女は学生であろう。 彼女は状況を理解していないのか、此方を見ていない。 だが、そんな事はこの際どうでも良かった。 今は僕は彼女の苦しむ姿が見たいのだから....。 僕は、あの幸せそうな笑顔を、不幸と苦痛で歪めたい。 ハサミを握り締め、僕は走り出す。 「ウハハハハハぁ――!」 見知らぬ彼女が居る人混みに向けて――。 「来るな....来るな――!!?」 周囲の人々が、そんな事を叫びながら空き缶やら、様々な備品やらを僕に向けて投げ付けてくるが、僕はそれを気にする事なく一気に突き進む。 「五月蝿いぞ、君達?」 僕は手の届く範囲の人々を、手早くハサミで切りつけると、人混みを掻き分け一気に彼女の元を目指した。 周囲の奴等の生き死には、どうでもいい。 今は彼女の苦しみが僕に、この上ない歓びを与えてくれるであろうから――。 そして、僕は邪魔な奴等を殴り飛ばし遂に、彼女の元へと辿り着いた。 「え....? 貴方、一体・・・?」 僕が彼女の元に辿り着いた直後、彼女はキョトンとしたまま僕に、そう問い掛けてくる。 そう....だからいい。 だからこそ僕は君を・・・。
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