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「いや、ほら。和磨じゃないよ!!」
慌てた亜由未は、無理矢理笑顔を作り私の腕を引っ張る。
でもその慌てぶりが、私の不安を余計に掻き立てた。
「いいよ亜由未。」
精一杯の平常心だった。
「ごめん…」
亜由未の謝罪が何を意味するのか、私にはなんとなく分かった気がした。
本当は今すぐにでも和磨の元に行って、問い詰めてやりたい。
「その子誰?どういう関係?」
頭では言いたい事、聞きたい事、沢山浮かぶのに、足がすくんで動けない。
目を逸らすことが出来なかった。
「亜由未、帰ろう」
弱虫な私は逃げた。
言い訳でも気休めでもいい。
自分を納得させられる理由が欲しかった。
でもそれが、どれだけ虚しい事かを私は知ってる。
だからもういいんだ。
言い訳なんて聞かない。
気休めなんて欲しくない。
和磨にとっての"私"は、
私にとっての"和磨"じゃない。
そんな恋はいらない。
「ほら、早く行こう」
亜由未の手を引っ張り、私は無理矢理その場から離れた。
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