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すると、それは、案外何ともなさそうに起き上がり、立ち上がって服の砂埃を叩き出した。
それが終わると、俺に一言
「来たでおじゃるよ」
と、口を開いてにっこりと微笑んだ。
「おじゃ……!?」
一瞬、理解が出来なかった。
……は?
何!?……こいつ、おじゃるとか言ってるよ!?
……とりあえず、落ち着け自分。
何とか冷静になって彼女を見てみると、彼女が着ているのは、何枚も折り重なった、色鮮やかな和装。
さらに、一番上には袖がない、一際短い衣。
これは、まさか。
「じ、十二単……?」
「そうじゃ。重いのに、まろはわざわざここまで来てやったのじゃ、何か申すことがあるはずよの?」
「あ、ありがとう……」
俺がとりあえずお辞儀をして礼を述べると、彼女はまた微笑んだ。
ってか、待て。
「来てやった」って、何?何事?
そう聞きたいのは山々で、実際喉まで出かかったのだが、それは次のことにより、必然的に止められた。
「オイオイ、俺らにも何かあんだろ?」
「余も忘れるでないぞ」
「わ、私も……」
残りの三人が、同じように、服の砂埃を軽く払っていた。
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