556人が本棚に入れています
本棚に追加
――あるとき、半袖の白いTシャツに黒いジーンズというラフな格好をした俺は、とある場所で、コンクリートの歩道に立ちすくんでいた。
「どうしたもんかなぁ……」
高層ビル群を背に、俺は腕を組み、目を閉じてじっと今の状況を考え込んだ。
俺の悩みは、数え切れないほど多い。
だが明確に、最も俺を悩ませているのは、借金(国債)と、家の庭(領土)だ。
「はぁ……借金は毎年膨らむばっかだし、近所はうるさいし……」
俺は力の抜けた声を出して、固いコンクリートの上に座り込んだ。
その時である。
俺の後頭部に、何か軽くて固いものが結構な勢いでぶつかった。
「痛っ!何だよ……」
よかった、軽い物で。下手すりゃ死んでる。
とりあえず前向きに考え、片手で茶髪の後頭部をさすりながら振り向くと、そこにはちょうど、俺の手のひらにおさまるほどの玉が、一つ落ちていた。
自分と反対方向に転がっていくそれに腕を延ばし、手に取る。
「何だ?」
それは透き通っており、俺の手のひらを透かしてみせた。そして、皮膚の感覚からするとガラス製であるが、それにしてはやけに軽い。
→Next
最初のコメントを投稿しよう!