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俺は何となく、その玉をジーンズの、あまり深くないポケットに仕舞い込んだ。
またどっかで、ぶつけたヤツにぶつけ返してやればいい。
そう思って。
……それにしても。
訳のわからない玉があろうとなかろうと、俺の置かれた状況は現状維持でしかない。
「頼む……誰か、何とかしてくれ……」
行き詰まった俺はついに、両手で頭を抱え込んで唸りだした。
――そして、そう呟いてしまったのが、全ての始まりとなる。
突如、ポケットに入っている玉が、人肌程度の熱を帯びた。
「ん?」
ジーンズ越しに熱を察知して玉を取り出すと、それは熱だけでなく、淡い光をも帯びていた。
その光が一瞬眩しくなって、玉を持っていない手で目を覆った後、俺は信じ難い光景を目の当たりにすることとなる。
「……な、な、何!?」
俺のいる場所は変わっていない。相変わらずの、高層ビル群の前のコンクリートの歩道の上である。
変わったのは、俺の目の前に四人、倒れていることだ。
「お、おい?」
とりあえず、俺の一番近くに倒れている、黒くて長い髪の、女性であろうものに、声をかけた。
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